7月のインドネシア行きに続いてまたシンガポール航空で遊びに行っていた。
旅行記が渋滞しているが、今回はかなりの長距離で映画を見まくったので、記憶があるうちに簡単なレビューをしておく。
まずは1本目。
Mr. Burton
タイトルのMr.バートンとはエリザベス・テイラーの結婚相手として有名なリチャード・バートンの育ての親である高校教師。リチャードはウェールズの鉱山労働者家族出身だったが、Mr.バートンに俳優としての素質を認められ、ケンブリッジの奨学金を得るために養子となり、けんかっ早いアル中の俳優となってからも支えてもらってやがてハリウッドでスターになる。
面白いのは俳優になるための訓練として山の中で発声練習をさせるところ。ウェールズ訛りに労働者階級訛りもあるリチャードを先生が矯正するのだが、先生役のトビー・ジョーンズの英語の美しいこと、うっとりする。
行儀作法は先生の大家さんが面倒を見るのだが、この大家さんがレスリー・マンヴィル、とうれしい配役。
若いリチャードを演じるのはハリー・ローティーという自分は知らなかった俳優だが、だんだんとリチャード・バートンの声や目付きに似てくる所、バートンをそれほど見ているわけではないがさすがと思わせる。
2本目は映画メニューにシンガポール映画という珍しいジャンルがあったので、せっかくのシンガポール航空ということで選んでみた。
Ramen Teh 「家族のレシピ」
2018年の日本・シンガポール・フランス合作映画、斎藤工が主演、監督はシンガポール人。
斎藤工の他に別所哲也や伊原剛志が出演しているので半分は日本語、舞台がシンガポールに移るとシンガポール人俳優も出てくるが、シンガポール在住日本人として松田聖子が登場するとこれが学芸会レベルの演技(というかセリフ読み)でひどい。
お話も子供の頃に亡くなったシンガポール人の母の家族を訪ねると祖母が戦争経験から日本人嫌い、という歴史もちらっと出てくるが、甘々のストーリーでシンガポールの観光とグルメ紹介映画みたい。
残念ながら素人臭い映画で鑑賞に値しない。
3本目はまた地味なイギリス映画を選んでしまった。
Vindication Swim
英仏海峡を泳いで渡るのは今も行われていると思うが、女性で最初に成功したのはアメリカ人、ということでイギリス女性初を目指す実在のメルセデス・グリーツという人の話。
時は1920年代、ドイツ系の名前のせいでスポンサーがつかず、引退して落ちぶれた元スタースイマーと猛特訓をしてなんとか15時間以上もかけて横断に成功する。
ところが直後にもう一人のイギリス人がそれよりもずっと速いタイムで横断に成功、と思いきやこれが実際にはすべて泳いでいないことがばれ、おかげでメルセデスも不正をしたのではないかと疑われる。そこでタイトルのVindication=潔白証明としてもう一度泳ぐことになる。
と、ストーリーとしてはなかなか面白いのだが、映画としてはひたすら泳ぐだけの絵面で盛り上がりに欠ける。
主演のカーステン・キャラハンは意志が強そうで役にぴったりだったし、ラストに紹介される実在のメルセデスは英仏海峡横断の後も長距離泳者として活躍し、その賞金でチャリティー活動をしたそうで、ネタとしてはさらに面白い映画になったかもしれないともったいない。
15時間も泳ぎ続けたのもすごいが、その横でコーチや医師を乗せた手漕ぎボートの漕ぎ手が一番大変だったんじゃないかと思った映画だった。
往路の最後、4本目は韓国映画。
ミナリ
2021年に米アカデミー賞の助演女優賞を獲って話題になった映画をやっと見た。
アーカンソー州のど田舎で農業を始めようとする韓国人一家の話で、韓国にいるよりいい生活ができるはずだったのに、となげく奥さんがつらい。
途中から合流する奥さんのお母さん、山ほどの韓国食材と花札を持ち込んで、一家の息子が仲良くなった白人の男の子に花札を教えると、「すごいゲームだ」と喜ぶ所には笑った。
暗い話ではあるけれど最後には救いもあって、リアルな移民の話としてよくできていると思う。
そして復路、1本目は今度はインド映画。
Mrs.
The Great Indian Kitchenというマラヤーラム語映画のヒンディー語リメイクだそうで、お見合いでエリート医師一家の嫁になった主人公、完璧な主婦のお姑さんの元、靴一つ自分で出そうとしない舅、亭主の世話に明け暮れて絶望してしまう話。
元映画のタイトルから期待した通り、はじめの方には伝統的なインドの料理やお菓子を作る場面が出てきて、これがおいしそう、なのだが手間がかかって大変なのもよくわかる。これを手抜きしないで3食作っていたら、そりゃそれだけで一日終わってしまう。
最後はぷっつんした主人公、家を飛び出して自分の道を進むのだが、あまりハッピーエンドには見えない。
最新MRI機器の話などしてもフードプロセッサー1つ認めようとしないインドの男たちはなかなか変わらないし、インド女性の自立はまだまだ大変ということだろうか。
復路2本目はフランス映画。
Jane Austen Wrecked My Life
フランス人だけれどジェーン・オースティンが大好きで彼女のような小説を書きたいと思っている本屋の店員の主人公。古くからの男友達の計らいでオースティンの遠い子孫が運営するJane Austen Residencyなる施設に小説を書きにやって来る。
ここで男友達、家の息子の二人の間で気持ちが揺れるのだが、なにかとこじらせているヒロイン、まるで魅力がないのが困る。
ジェーン・オースティンをタイトルに入れながら、オースティンらしさも全くと言っていいほどない。
所詮フランス人にオースティンらしさを求めても無理だったか。
3本目はまたインド映画。
Berlin
ベルリンを舞台にしたスパイの話、と言ってもベルリンはドイツの首都ではなく、デリーにあるカフェ。各国諜報員がここで情報交換をしているのだが、そのためにウェイターには聾唖者を雇っている。その一人がスパイ容疑でインドの情報局に逮捕され、通訳として手話の教師が呼ばれて複雑な陰謀に巻き込まれる話。
この陰謀が入り組んでいて、うとうと見ていると訳が分からなくなる。
また画面がいつも暗く、その上インド人情報局員たちがみんな同じように見えて誰が誰やら。
良くできたプロットではあるがわかりずらく、後味があまりよろしくないのが残念。
そして通算8本目、今度はスペイン・イタリア合作のドキュメンタリー映画。
The Sleeper - The Lost Caravaggio
スリーパーとはアート業界では著名な作家の未発見の真作のことだそうで、これを見つけるのはすべてのアート・ディーラーの夢なんだそうだ。
この映画の「主人公」はカラヴァッジョの「Ecce Homo」。スペインのある旧家に100年も前から掛けられていたが、2021年、引っ越しの際に1500€で売りに出され、その際にどうもカラヴァッジョの真作らしいと「発見」されて大騒ぎになった。
修復を経て鑑定家たちにほぼ真作のお墨付きをもらい、そこから新旧アートディーラーたちの駆け引きが始まる。
できればオークションになる前に手に入れたい、個人に売るか、政府や博物館から横やりが入らないか、ディーラー同士の潰しあいは避けたい、などなど、アートディーラーの世界は想像以上にすごそう。
結局若いディーラーたち3人の連合軍がオークションを経ずにある個人に入手させ、元のオーナーの意向でプラド美術館に無期限貸与されることになったとか。買い手も購入金額も非公表だが、元のオーナーには1500€以上が入ったことは間違いない。
というわけで、往復の飛行機で8本の映画鑑賞はこれまでの最多記録かも。
シンガポール航空の品揃えはさすが多国籍で選び甲斐があった。
ただし情報が少なすぎて外れも多かったのが残念。
旅行記はだいぶ先になりそう。
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