しばらく前、五反田から武蔵小山まで歩く羽目になった時、普通の民家の玄関脇に小さな看板が出ているのに気が付いた。
小さな字を読んでみると予約必須のフレンチとある。
気になっていた所、なんと京都在住のグルメな友人が既に目を付けていたので、彼女の上京に合わせて行ってみた。
レストランag(エグ)があるのは武蔵小山駅からなら5分ほどの所。

本当にこの辺によくある古い民家だけれど、入り口だけはガラス戸になっている。
入ると脇はキッチンになっていて、すぐに案内されて2階へ。

小さな民家らしい広くないスペースの真ん中に下の厨房からお皿を上げるためのミニ・エレベーターがあり、天井を見上げると屋根裏の断熱材が見えて全体に手作り感満載の面白い造り。
接客をしてくれるのはオーナーであるソムリエ。
でまずは「診察券です」と渡されるカードの裏に本日のメニューがある。

おなまえ欄には各自の名前が書かれていて、実はこのために出席者全員のフルネームを事前に聞かれていた。こちらの店、こういうジョークが大好きらしい。
飲み物はペアリングもあるが、みんなそれほど多くは飲めないので、とメニューをもらうと、並んでいるワインがフランスやイタリアよりもクロアチア、シリア、中国などなど、意表をつくものがいっぱい。
選びようがないのでソムリエと相談しながら出してもらったのは
左がイギリス産のスパークリング、右はボスニアヘルツェゴビナの赤ワイン。イギリスのスパークリングは今とても注目されているとか、ボスニアのワインは修道院で作られているとか、ソムリエの解説も熱が入ってめちゃくちゃ面白い。お味はどちらもとてもおいしい、と言いつつ、飲めない自分は炭酸水で乾杯。
そして運ばれてきた最初の2皿。

左がいかぽっぽ?と思うがまるでトリュフチョコのようなものが食べると確かにイカの味がする。右は甘いエビに柑橘の香りが乗ってうま~い。

3皿目の左側はワサビのアイスクリーム、右側の生の平貝の上には生とマリネされた蕪、梨が乗って、緑の葉もワサビ。

4皿目、菊の花びらと焼いた春菊の下に隠れているのは穴子のフリット。緑のソースも春菊、カリッとしたフリットの中の穴子が柔らかくてこれもおいしい。

メインの魚は金目鯛。皿の上の小さな魚がかわいい~。鯛の下にはニンジンのピューレ、その下のビスクソースと皿の上の粉は前菜のエビの殻を使ったとのことで、こちらのレストランでは食材を使い切ることもテーマらしい。

お肉は鴨。実はあまり得意な食材ではないのだが、濃厚な甘いソースでおいしくいただき、それ以上に付け合わせのビーツのパリパリシートが気に入る。
デザートは2品。



初めにウイキョウを使った洋梨のソルベが出てくるが、その後から砕いたメレンゲが出て来て、これを液体窒素でパリパリにしてソルベの上に載せてくれる。メレンゲは柑橘風味で爽やか。
そして2つ目のデザート、大学芋とあるのでどんなものが来るのかと思っていたら

お皿の隅に砂利?この粒粒がサツマイモやゴマでできていて、葉っぱはかぼちゃをシートにしたものと実に手間がかかっている。


最後にコーヒーと出されたプチフールもとてもおいしくて、一皿づつは少量に見えて、最後にはきっちりお腹いっぱいになった。
こちらのお料理はイノベーティブ料理とのことで、やたらに技巧を凝らした料理と言うものには正直いささか懐疑的だったのだが、今回のお料理はどれも手はかかっているが素材の味がしっかり感じられ、見た目の美しさにユーモアも感じられて食べていてとても楽しかった。
時々お料理を運んでくれたシェフはソムリエの奥様だそうで、この二人のコンビも最高。と、とても気に入ったこのお店だが、開店してまだ2年ながらこの年末でもう閉店してしまうとのこと。
「全然お客が来ないんで」とオーナーが言うが、来た人の評判は良さそうだし、スタートダッシュに失敗したのだろうか。実にもったいない。
誰かパトロンでもついて復活してくれないだろうか。
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